COLUMN 『服の向こう側』 vol.44 /  柔らかく丸い衿

  今回、2020年春夏スタイルの撮影をFIRENZEで行った。 その際、コーディネートの主軸の一つとして使ったのが、今回のラウンドカラーシャツである。           数年前にもラウンドカラーのシャツが流行ったことがあったが、その時は衿が小さくワイド気味のものが多かった。タイドアップも勿論出来るが、洗いざらしでカジュアルに着ても洒落てる、、、というイタリア的解釈のラウンドカラーであったと思う。     それと比べると今回のラウンドカラーは衿先も少し長く、開き具合も狭くレギュラーカラーに近い雰囲気。英国の伝統的なシャツを彷彿させるクラシックな衿型である。 シャツメーカーなら多くの衿型を持っていて当然この辺りのデザインも持っている、、、と思いきや案外もっていないケースが多い。特にイタリアのシャツファクトリーでは、イタリア的ラウンドカラーはあるが英国的なデザインは無いケースがあるのだ。   無いなら作ろう!と製作にかかった。   何でもかんでも別注で作るのが良いとは思わない。「欲しいものが無い。なら作る。」のがオリジナルの本来のあるべき姿だと思う。「別注の為の別注?」「別注してますと言いたいが為の別注」が多く氾濫しているように思うのは私だけだろうか?                 毎度のことながら打合せは難航。 1時間程で終わる予定の打合せが、気が付けば3~4時間経っていたというのはザラである。『ナポリは難しい』と日本人の同業者だけでなくイタリア人までも口を揃えて言うが、本当にその通りだと思う。しかし、『ナポリにしか出せない雰囲気がある』のも事実だ。   上がってきたサンプルを見て苦笑いしながら連絡することは一度や二度ではない。(仕様間違いや指示通りになっていない…等々。)         ※何故かセカンドサンプルでOKだったところが、サードサンプルで間違って上がってくる。一つ改善されると、一つ間違う? いたちごっこのような打合せが数回続く。 並べてみると分かりやすい。衿の開き具合が違うだけで全く違うシャツになる。       今回も計4回サンプルを上げてもらって何とか商品化にこぎつけた。衿のデザインだけでなく、ステッチ幅、芯地、台衿フロント下のクリ、、、等々言われなければ分からないけど、実はコダワリが詰まったモディファイをしている。     英国のシャツメーカーは芯地が硬くカッチリした印象になるが、このシャツは適度な柔らかさの芯地を使いながら接着芯で固めないフラシ仕上げにこだわった。クラシックなデザインだけど独特の柔らかい雰囲気に仕上がっている。 縫いやすく綺麗に仕上がりやすい(クレームになり難い)との理由で生地を接着芯で固めて衿やカフスを作るイタリア・シャツメーカーも多いが、やはり接着芯で作られた衿は堅い印象で独特の柔らかさが表現できない。接着芯を使っていても高級シャツと認知されているブランドもあり、好みの問題でもあるが、、、RING JACKETのスーツは接着芯ではなく、手間暇がかかるが生地本来の風合いや柔らさを大事にする毛芯仕立てだ。どちらが相性の良いシャツかは言うまでもないだろう。   クラシックな佇まいだけど、ナポリならではのアジと柔らかさがあるシャツに仕上がった。手前味噌ながら良いシャツだと思う。                 [...]

気になる丸み

    『丸み』が気になる。   クラシックな丸みだ。       もう一つ気になるのは、『衿の開き具合』。 詳しくは次回に。                  

Halstead と青春の想い出

「英国生地のスーツ」というと、「硬い、重い」などネガティブなイメージで捉われることが多かったけれど、ここ最近で様子が変わってきた。 とは言えイタリア生地のトロッとした柔らかな質感の方がまだまだ支持率は高い。恐らくこれがひっくり返ることは無いと思う。けど、それで良い。皆に好かれる必要はないのだ。     20代前半の頃、ドレスクロージングにハマった。当時、古着×ヨーロッパワークウェア×デザイナーズブランドをミックスして着る…というような変則的な服装が好きだったが、漠然としたスーツに対する憧れがジワジワと大きくなってきていた。そう言うと聞こえは良いが、まあそんな格好良いものではなくて、女子受けもするんじゃあないかという軟派な気持ちの方が大きかったかもしれない。   しかし、そんな軟派な気持ちとは裏腹に奥深いドレスクロージングの世界に眩暈を覚えながらズブズブとハマっていく事になる。   クロージングの右も左も分からないときに何の先入観も無く選んだのがwilliiam halsteadのライトグレーシャークスキンを使ったスーツだった。イタリア生地には無い質実剛健な雰囲気が堪らない。一般的に多いダークトーンのスーツではなく、ちょっと変わってて洒落てるように思ったのも選んだ理由だった。 おろしたてのスーツを喜んで着ていると、『渋い趣味だな~。そのスーツ絶対モテないよ。』と先輩に言われ少しへこんだ。が、すぐ後にニヤリと笑いながら肩をポンと叩かれ『いいセンスだ。それオレも欲しかったやつ。』とも言われた。 なんだか“分かってるやつ”の仲間入りをしたような感じがしてとても嬉しかったのをよく覚えている。   それから先輩にクロージングの何たるかを教えてもらう為の質問責めの日々が始まる。少々面倒くさいヤツに捕まったなという顔をされたが、なんだかんだ言って可愛がってもらった。飲みに行くと毎回深夜までファッションについて語り合う。ドレスクロージング・漢の世界にどっぷりハマるのに時間はかからなかった。   当時、コンパに行って盛り上がってくるとファッションの話をしたくなる悪い癖があり、 『007のショーンコネリー扮するジェームス・ボンドは、グレーシャークスキンのスーツを着てて、黒のニットタイとの組み合わせが最高!』なんて話をするもんだからやっぱりモテなかった。大概の女子はポカンとした顔になる。服オタクが喜ぶファッションウンチク話が好きな女子はかなりレアだ。我ながら阿呆だと思う。 何故モテないかデロリアンに乗って説教しに行ってやりたい!が、、、   飲み会がお開きになる少し前、トイレの前でバッタリ会った意中の娘に『凄くスーツが好きなんだね。廻りが気にならないくらい夢中になれることがあるっていいね。』と言われてドキドキした。     halstead の生地を見ると、そんな甘酸っぱい?青春時代を思い出す。             William Halsteadの質実剛健な生地を使ったスーツ。 全員に好かれることはないが、好きな人はグッとくる。それで良い。 少し浅めのブルーストライプも抜群だ。       ITEM : SUIT / RING JACKET MEISTER 206 ART : RT029S54X MODEL : no.271EH-206 / s-178H PRICE : 220,000- [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.45 / paisley print tie  

「ヴィンテージ調のプリントタイ」の人気がここ数年続いている。 レトロなようで新しい…、というのが出だした頃のイメージだったが、しばらく続いたので新しさというより定番的なものになってきた感がある。   そこで、少し変化が欲しいなと思っていた際にナポリの工房で見つけたのが、ペイズリーにプリントをしたタイだった。 通常のネクタイはツイルやマットなどの組織が大きく目立たない無地の白生地にプリントする。今回のは、ジャカード織機でペイズリーの白生地を織り、その上から色柄をプリントする手法だ。 工房のマエストロによると、70年代後半~80年代に流行った手法の一つだそう。     その手法を用いて、モチーフはもっと古い資料から選んだ。カラーリングも色々とアレンジしたので時代感が分からない不思議な雰囲気のタイが出来上がった。 古き良き時代のサンローラン、ピエールカルダン、レノマ的な雰囲気もあるが、クラシックな雰囲気もある。時代、エリア、ブランド、、、特定できない感じが良い。             日本人は、『~であらねば』『正しい着方とは』 といったHow to 本やルールが好きだ。雑誌などでも、「こういった靴にはこのスーツ、、、」「このシャツにはこのネクタイが正解!」なんて記事をよく見かける。古くはアイビーブームのときから、ルールに縛られる安心感に浸ってきた歴史があるので仕方無いのかもしれない。 案外、洋服屋の方がこういったルールを気にし過ぎて自由にファッションを楽しめないこともある。     基本は確かに大事だが、全てルール通りの着こなしは失敗はしないぶん没個性的になる恐れがある。勿論、派手派手しいのが良いと言っているわけでは無い。 『基本ルールは分かっているけど、、、たまにはそんなの無視した着こなしも悪くないな。』 そんな気分のときにピッタリなタイだ。     いつの時代でも、ファッションは縛られるものではなく楽しむものだと思う。               [RING JACKET MEISTER ONLINE STORE]                 [RING JACKET MEISTER ONLINE STORE]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.44 /  餅は餅屋?

『餅は餅屋』と言われるように『パンツはパンツ屋』『シャツはシャツ屋』といった専業ブランドが日本人は好きだ。シャツの中でもドレスシャツ専門、カジュアル専門のシャツ屋というようにより専業化したものが好まれる傾向にある。多角的に展開するより一つの事に特化している専業ブランドの方が信頼感があるというのが大方の意見だろう。   意外に思うかもしれないが、ヨーロッパでは案外そうでもない。専業ブランドと言っていても、その実は多角的に展開している会社の一部門であったり、自社工場を持たず外注生産で廻しているところも多い。商品企画も社外の企画会社に委託しているケースまでもある。 所謂「トータルブランド」と「専業ブランド」の差は? 実は思い込みやイメージで判断していることも多いのではないだろうか?   勿論、皆がイメージする専業ブランドもある。しかし、上記のように様々なケースがあるのが実情だ。 海外に出張に行って話していると、そんな事にこだわるより、そのブランドの世界観やコーディネートをセットで提案する方が理に適っているという人達が案外多い。     結局のところ、 ブランドの肩書 (専業ブランドであるということも含めた) で判断するのではなくて商品そのものが『良いかどうか?』が重要だと思う。     気付いている人もいるかも知れないが、ここ最近の投稿をあえて『ネクタイ』を中心にやっていた。ただ、ネクタイメーカーの用意したものをセレクトしてブランドタグをつけかえているのではなく、様々な手法を用いて「ワクワクドキドキする商品開発」をやっている。正直、ネクタイメーカーでもしないような事までしていると思う。 ネクタイだけでなく、シャツ、パンツ、アウター、勿論ジャケットも同様だ。     最終的に「専業ブランド神話」を信じるかどうかは個々人の好みによるが、そんな神話を覆すような商品を作り続けたいと思う。     さて、 前置きが長くなった。     今回は特に好き嫌いがハッキリでるデザインだが、『american flavor mix』な今季の気分にピッタリの1本だ。               american trad shirt の定番の一つとしてマドラス柄がある。元々はインドの手織り生地で柔らかく鮮やかな多色使いのチェック柄が特徴だ。 それをパッチワークにした生地でシャツやシャツジャケットを作るのも定番として知られている。 アメリカンな気分にピッタリではあるが、面積の多いシャツやジャケットでパッチワーク柄はかなり目立つし難易度が高い。     そこで、パッチワーク風の柄をデザインしてネクタイに仕上げた。 程良いカジュアル感を出す為に、シルク100%ではなくリネン58%・シルク42%の生地にプリントしたのもポイントだ。     以前も書いたが、全身アメトラではなく あくまでamerican flavorをミックスするのが気分である。           [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.43 /  Mr.Slowboy × RING JACKET vol.2

2018年 秋冬シーズンに好評だった『Mr.Slowboy × RING JACKET』pocket square 企画の第二弾が届いた。 ⇒詳しくは前回のコチラ             2019年 春夏のディレクションテーマ『JAM COLOR(ジャム カラー)』を伝えたところ、、、 ジャムを彷彿させる綺麗なカラーを取り入れるのは勿論だけど、『ジャム』から発想を広げてRING PEOPLEがロンドンの公園でピクニックをするのはどうだろう? というアイデアが出てきた。   良いね!面白い!!!     という事で出来上がったラフスケッチがこちら 何だか楽しそうな雰囲気だ。                 今回もポップなイラストながら胸元にさすとすんなり馴染む素敵な商品が出来た。 是非手に取ってもらいたい。                   ITEM : POCKET SQUARE / RING JACKET ART : 59269S01 PRICE : 12,000- [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.42 /  american flavor vol.2

前回、昔のRING JACKET広告資料から復刻したamerican flavorなタイを紹介させてもらった。 生地から作り込んでいったのでとても思い入れのあるタイである。   実は、これだけではなくて、、、 どうせCOMOまで行って作るならと他のネタも仕込んできた。     前回みつけた古いスクラップブックと共に見つけたのがこの資料だ。         前回の1981年より更に古い 1973年のブルックスブラザーズのカタログである。     なかなか興味深い内容が盛り沢山だ。興味の無い人が見ると、ただ古臭いだけの資料かもしれないが、他社のデザイナーや企画者がみると興奮すること間違いなしだと思う。 こういった資料が何気なく残っているあたりにもRING JACKETの歴史を感じる。       パラパラとめくっているとふと気になるページがあった。             当然、レジメンの落ち方もアメリカ式。 右上のデザインが気に入ったので、この資料をベースにCOMOの生地メーカーと打合せをした。           ※COMOの某シルク生地メーカーのGiorgioさん。長年ネクタイ業界にいる重鎮ながらチャーミングなキャラクターで彼を慕う業界人も多い。     ただメールして終わり、、、 ではなく打合せをしていると色々な話が出てくるから面白い。     『懐かしいなぁ。イラストなんで分かり難いが、これはイギリスの生地メーカーが得意としていたクラシックな ツイル&サテンのクオリティだと思うよ。よく見ると全部同じ組織じゃあなくて、無地とラインのところがツイル組織とサテン組織に切り替わっているのが分かるかい?』     『昔は、このクオリティが流行ったの?』     『今でも無い訳じゃあないけど、最近はあんまりみなかったかな。でもトレンド的にこういった生地はまたアリかもしれないね。』     『じゃあそのブリティッシュ ツイル&サテンの生地は今でも作れる?』   [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.41 /  american flavor

以前のブログにも書いたが、『英国調』のトレンドが長く続いたので少し変化が欲しくなってきた。 そこで、今期はamerican flavorを少し加えるのが気分だ。トラディショナルなブリティッシュスタイルにアメリカンフレーバー、、、まんまアメリカンではなく、シックにセンス良くというところは往年のフレンチアイビーにも通じるイメージだ。       何か良いネタが無いかな?と社内の古い資料を漁っていると面白いスクラップブックを見つけた。           1981年のリングヂャケットの広告資料だった。 旧206レーベルのネイビージャケットと共にコーディネートされていたのはトラディショナルなレジメンタルストライプタイ。 レジメンの向きが向かって左上から右下に落ちるアメリカ式である。現在は、右上から左下に落ちるイギリス式が一般的で、イタリアのタイメーカーのものは殆どイギリス式のデザインである。 この広告が掲載された時代背景からもアメリカの影響を強く受けていた時期であり、文章も『ニューイングランドでは、、、』とあるように当時の流行を感じさせる興味深い内容だ。   そう、今はこんなタイが何周か廻って気分である。   アメリカントラッドのブランドに行けばあるにはあるが、、、 ズバリすぎるのではなくて、もう少しアレンジしたものが欲しい。 そこで、生地からオリジナルで作ることにした。       クオリティは、英国の老舗タイメーカーも好んで使う打ち込みのしっかりとしたレップ組織。   デザインは昔の広告写真をCOMOに送って復刻。配色を少しだけモダンにアレンジ。ベーシックな配色の中に、今季のテーマカラーである『JAM COLOR』を加えた。   勿論、ストライプの落ち方はアメリカ式だ。     これをナポリ最古と言われているタイファクトリーで4折り共裏仕様(クワトロピエゲ カプッチョ) に仕上げた。         american flavor を感じさせながらも、古臭さがない。 コテコテ感が出たコスプレファッションは、ある意味簡単だ。「程良いアレンジ」を加えるのは案外難しい。 全身アイビーや、英国調、、、 ではなく、いつものスタイリングにタイだけ少し違うテイストを入れる。そんな気分に絶妙にマッチする良いタイが出来たと思う。   マイブームとしては、敢えてLポケットのパンツにこういったタイを締めたい気分だ。     ITEM : TIE / RING JACKET Napoli ART : [...]