COLUMN 『服の向こう側』 vol.38 / French styleと L pocket pants

            『L ポケット パンツはフレンチか?』 自分の中では随分昔から“何故かフレンチなアイテム”だ。       ここ最近、『フレンチトラッド』『フレンチアイビー』というキーワードを雑誌等でチラチラと見かけるようになってきた。 艶っぽいイタリアファッション一辺倒から、『英国調』のトレンドに移行してしばらく経つ…、じゃあその次は? という事で『フレンチ』に注目が集まっているのだろう。   実は、RING JACKETでは数シーズンおきにフレンチの匂いのする商品をこっそりと展開していた。メインの商材ではないが、ちょっとトレンドとは違った視点での商品があった方が面白いと思うからだ。 だが、声高に「フレンチスタイルです!」と声を上げるのは何だか気恥ずかしい感じがしてブログなどで特別発信はしていなかった。 それは、青春時代の写真を見返すような気恥しさや照れのような感覚だろうか?好きなんだけど好きと言うのがちょっと照れる、、、自分の中の『フレンチ』はそんな感じだった。                     20数年前にフランスにハマった。その前は、アメカジ、古着がベースにあったが、それからトラッド、パリやアントワープのデザイナー物、ドメスティックインディーズブランド、ヨーロッパのワークウェア…、と今振り返れば節操がなく何でもアリだった。 そんな何でもアリだった時代から一気にフレンチにハマっていく。ファッションだけでなく、フランスと付けば服だろうが雑貨だろうが本だろうが何でも盲目的に買っていたのだ。でも、知れば知る程『フレンチスタイル』の定義が曖昧でよくわからない。   当時働いていた職場の先輩にフレンチスタイルとは?を聞いた 『全てのことに答えを見つけようとするな。言葉にすると陳腐になる。考えるんじゃあない感じるんだ。』 と雲をつかむような話をされ全く分からない。     ポカンとしていると、先輩はニヤリとしてこう続けた、 『セントジェームスのバスクシャツやベレー帽、ウエストンのローファーだけがフレンチじゃあない。フランス製のものだけがフレンチじゃあないんだ。クラークスのデザートブーツ、ジョンスメドレーのハイゲージニット、コットンギャバジンのステンカラーコートもフレンチなんだ。分かるだろう?』 正直、まだ分からない。   仕方ないなという仕草をしながら、けだるそうに煙草に火をつけた。銘柄はゴロワーズだった。 独特の匂いが辺りに充満し始める。煙草をくゆらせながらゆっくりと話し出した。   ゴダール、トリュフォーのヌーベルヴァーグから始まり、「勝手にしやがれ」のジャン・ポール・ベルモンド、スタカン時代のポールウェラー、BCBG(べーセーべージェー)、セルジュ・ゲンズブール、ボリス・ヴィアン、サンジェルマン・デ・プレの人達、カフェ・ド・フロール、、、 色んな話を聞いて、何となく分かってきたような気がしたが、、、まだモヤがかかったような感じだった。今思えば、先輩もそんな感じだったのかもしれない。       仕方ないので、別の先輩にもフレンチとは?を聞く 『いいか、男の服っていうのは結局のところルーツを辿っていけばイギリスになる。それから、それを違うベクトルで自由と機能性、合理主義を追求して広げたアメリカだ。その二つだ。けど、それらは其々にスタイルやこう着るべきといったルールがあってそれに倣うのが普通。それをセンスよくミックスしながらスノッブに着るのがフレンチだ!』 ちょっと強引すぎるかな?とも思ったが、あまりにも自信満々で言われたからか?なんとなく合点がいく気もした。     [...]

RING JACKET Napoli / double face safari jacket

                      前回UPしたベージュ×エクリュのカラーリングもラグジュアリーで良いが、このネイビー×ブラウンも抜群のカラーだ。 濃紺ではなく少し淡いネイビー。濃過ぎず、薄すぎない、好きな色合いだ。   また、裏側のブラウンが少しだけ表にも出ていて何とも言えない絶妙な色合いになっている。         ITEM : JACKET / RING JACKET Napoli ART : 59058F02X MODEL : RJNJ-01 PRICE : 250,000- YEN +tax COMPOSITION : WOOL 100% SIZE : 44 . 46 . 48 . 50 【RING JACKET MEISTER ONLINE STORE】 [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.37 / RING JACKET Napoli -double face safari jacket vol.2

ダブルフェイスの生地は、その名の通り二枚の生地を接結糸でとめて1枚の生地にしている生地のことを言う。二重織りや綾織でタテ糸とヨコ糸の出方が違って表裏の色が変わっている一枚の生地もダブルフェイスと最近では呼ぶが、先述のダブルフェイスとは根本的に違う。     接結糸でとめているダブルフェイス生地をジャケットにする場合は、裁断したパーツの端を数ミリだけ2枚の生地になるように剥いでから中に織り込む。それから端の処理を手でまつることによって出来上がる。 通常の生地の場合は、端の処理を三巻きにするか、別の生地を重ねて端の処理をするのでどうしても厚みが出てしまう。 ダブルフェイス生地を使った仕立ての利点は、こういった特性を活かして生地一枚で仕上げることが可能なので非常に柔らかく軽く仕上げることが出来る点だ。     しかし、通常の仕立てと縫製方法が違う為、ある程度上記のことを理解しながらデザインの指示をしないと上手くまとまらない。                     腰のポケットをインバーテッドプリーツ入り、そしてハンドウォーマーポケット(サイドからも手が入る仕様)にした。全部そのまま生地を重ねていくと、、、生地が何重にもなってモコモコになってしまう。元々2枚の生地を一枚に仕上げているので、単純に普通の生地の2倍厚みが出ることになってしまう。   そこで、 このパーツは生地を剥いで一枚にして、、、ここの部分は二枚のままで、、、 といった打合せに時間を要した。生地自体の厚みや伸縮性、縫いやすさ等々と沢山の要素があるので、デザインの指示だけでは満足のいく商品は出来上がってこない。                                 当初、背中にアクションプリーツを入れていたが、、、 ココも厚みが出過ぎるので無くすことに。                 カッターで生地を二枚に剥ぐ専用の機械。ダブルフェイス専門工場にある特殊な機械だ。       サイズの大きい小さいだけでなく、細かい仕様まで詰めていっている。RING [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.36 / RING JACKET Napoli -double face safari jacket vol.1

  ナポリをはじめとした南イタリアならではのハンドメイドの服が好きだ。 独特のアジ、何とも言えない雰囲気、着心地の良さ、昔ながらの手仕事、、、挙げていくとキリがないほど好きなところが沢山ある。   その一方で、納期遅れ、仕様間違い、ナポレターナならではの性格?、、、等々のトラブルが後を絶たない。多くの輸入代理店が『良いのは分かるけど…、リスクが大きすぎる。』として扱わないのもよくわかる。   しかし、だ。全て平均点の『悪くない商品』、、、より、『悪いところがいっぱいあるけど、それらを帳消しにしてしまうぐらいズバ抜けた個性がある商品』に心惹かれる。知人には、『おかしい』『理解出来ない』と良く言われるが、まぁ好きで好きで堪らないものは止めようがない。     そんな商品が先日入荷した。 正直、納期や仕様の件で何度も何度もやりとりしていて『もうこんな事は最後にしよう。』とまで思っていたのだが、、、 入荷した商品を見るとその思いは消えてしまった。     素晴らしいクオリティに感動したのだ。     ITEM : JACKET /  RING JACKET Napoli ART : 59058F01G MODEL : RJNJ-01 PRICE : 250,000- YEN +tax COMPOSITION : WOOL 100% SIZE : 44 . 46 . 48 . 50         ダブルフェイス仕立ての商品は、特殊な技術を要するので通常の工場で出来ない。ドレスクロージングのファクトリーブランドもダブルフェイスに関しては協力工場に依頼するのが一般的だ。 前回(2017年FW)はシチリア島のダブルフェイス工場まで行ってコートを作ったが、諸事情があり別の工場を探すことになった。情報を色々と集め白羽の矢がたったのはプーリア州レッチェのとある工場だった。   メゾンブランドの生産からナポリの重鎮メーカーの生産まで手掛ける凄腕工房だ。ナポリよりさらに南下することになる。一瞬、『遠いな。』と思ったが、すぐ訪問することに決めた。 [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.35 / bespoke shoes『TETSUO MUNE』

淀屋橋店で『TETSUO MUNE』のビスポークイベントをするので、今回は靴のことを書いてみようと思う。     初めて会ったのは、15年以上前だっただろうか? 知人の紹介だったか?飲みに行ったらたまたま居合わせたのか?あまり詳しく覚えていない。ただ、誰とでもすぐ打ち解ける朗らかな性格とファッションが本気で好きな人だなと思ったのは覚えている。暫く会わない期間があったが、彼がジョンロブで働くようになってからたまに会って話すようになった。服屋から靴屋に変わりお互い歳をとったが、初めて会った時と全く変わらないのが彼の良いところの一つだと思う。     そんな彼から突然連絡がきて 『今の会社を辞めてビスポークシューズをやっていこうと思っています。まだ、一人でやっていて数量も出来ないので、、、ある程度作れるようになったら見てもらえませんか?』 と言われた。     スタイル提案やフィッターとしてのスキルは抜群だったが、モノ作りとなると少し話が違う。しかし、本当に好きで好きで堪らなくて突き詰めてやっていく人は、道は険しくてもいずれ大成する!というのが私の持論だ。色々と否定的な事を言う人もいたが、私は応援していた。     また、暫く会わない期間があり忘れかけていた頃 『靴をみてくれませんか?率直な意見を聞きたいんです。』   と連絡があった。この業界は浮き沈みが激しく、志半ばで辞めていった人間を何人も見てきたので素直に嬉しかった。それから何度か試作の靴を見せてもらっては、ここはこうした方が良いのでは?この木型は…、とやり取りを繰り返していた。     数か月経ったある日、連絡があった。 『某ビスポークメーカーに勤めていた職人さんが独立するので、自分の靴作りも手伝ってくれることになりそうなんです。それが出来たら、少量ずつですがお客様の受注生産が出来るようになるかもしれません!』 ※ビスポークシューメーカーは、一人では生産数が極めて限られるので数人の職人とチームを組んでやるのが一般的。 自分の事のように嬉しかったのを覚えている。まだリングヂャケットで取り扱うかどうか?の話も全く決まっていないときであったが、思わず自分のオーダーシューズをお願いした。     これまで靴のパターンオーダーをした事は何度かあったが、本格的なビスポークは初めてだった。 靴の企画案をイタリアのシューメーカーに持ち込んだり、デザインを考えた事も何度かあったけど、それらともまた違った魅力があってとても新鮮な経験だ。       1stフィッティング     細かく計測していく     < トライオンシューズ。スーツオーダーのゲージのような靴。 足を採寸した情報と、靴を履いた状態の情報との両方を使って精度を上げていく。         それから数か月後に仮縫いの靴が出来上がってきたので2ndフィッティングに行ってきた。         当たる箇所や、、、もっと攻めていく所と、、、 相談しながら決めていく。     [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.34 / 『Mr.Slowboy × RING JACKET』

  Mr.Slowboyというキャラクターをご存知だろうか?   Dunhill,Barbour,Drakes…などのファッションブランドから LONDON underground,BMW MINI,Cathay Pacific…といったファッション以外のブランドまで幅広いクライアントを持つロンドン在住のイラストレーターFei氏によるキャラクター。         独特の雰囲気とタッチが世界中で評価されており 今最も人気のあるイラストレーターの一人だ。     インスタグラムなどのSNSでも人気があり以前から注目していた。 ⇒Mr.Slowboy instagram ⇒Mr.Slowboy HP     PITTIやMILANO UNICAなどの展示会でもイラストをブランドイメージのディレクションに使うケースがここ最近増えてきていた。SNSの普及や人気に伴ってクオリティの高い写真が求められる一方で、写真とはまた違った表現手段に注目するブランドが出てきていたのだ。     10数年前までは、いわゆる『綺麗な写真』はプロのフォトグラファーの独壇場だった。しかし、デジタル機器などの技術の進歩により少しかじった素人でもプロ顔負けの写真を撮ることが不可能ではなくなってきているのが現状だ。 しかし、その一方で完璧に綺麗な写真?が世の中に多く溢れることにより、受け手の感動が昔より減ってきたような気がする。贅沢な話だが、ただ綺麗なだけの写真では驚かなくなっているのだ。     完璧な写真より、フィルムカメラによるモノクロ写真や手書きのイラストレーションのように「受け手側に想像する余地のある表現方法」の方が新鮮に映る場合もある。1周廻ってアナログなことが今面白い。       そんな事を考えていた際にふと目についたのがMr.Slowboyだった。 ただイラストが上手いだけではなくて、何故かテーラードジャケットやドレスクロージングに対する愛着のようなものを感じたのだ。     そこで、RING JACKETのイラストを描いてもらって、それをポケットチーフにするのはどうだろうか? という案を思いついた。     昔から思い付いたらすぐ行動に移したい性分だが、思い付きだけでは製品は出来上がらない。 アイデアや思い付きなら誰でも出来る。どうやってそれを形にしていくか?またそのアイデアを実現する為のチームや協力してくれる取引先があるかどうか?がとても重要だ。     そこで、まずRING JACKET Napoliのネクタイ生地を作ってもらっているCOMOのシルクプリントをやっているメーカーに確認をとりイラストをベースにプリント出来るかどうかを確認した。返事はOKだ! プリントするシルク生地の見本も送ってもらった。縫製工場のキャパも確認。 なんとか生産する体制はとれた!     [...]

2018 fall & winter shooting – 1

2018年 秋冬のビジュアルイメージ 撮影に行ってきた。 撮影スタジオではなく、前回に引き続きロケ撮影だ。スタジオで作り込んだ写真も好きだが、ロケならではの雰囲気がやはり良い。       特急電車でしばらく揺られた後、3両編成の単線に乗り換える。     のどかな風景が広がる。 『こんなところでドレスクロージングの撮影?』と訝しむ人もいるかも知れないが、、、 これまでとは少し違った撮影を行うことにした。                 前日ロケハン、早朝撮影に向けて前泊する。 東京から来た撮影チームと合流。                 緊張感のある撮影現場も好きだが、休憩時間の合間に話すふとした会話が好きだ。 『最初はスタジオ撮影だったけど、、、ロケになってだんだん過酷な撮影が増えてきましたね。』 少し笑いながら冗談まじりに話す。     カメラマンも笑いながらノッてくる。 『前回の砂丘撮影も結構大変でしたね。同業者からも噂になっていましたよ。 でもそれが楽しくなってきた。今回は、RING JACKET用に撮影機材を新たに買ってきました。』     『えっ?それは他社の撮影でも使える機材なんですか?』     『今のところ予定は無いですねぇ。でも何かいいかなぁと思って。』 タバコを吸いながら缶ジュースでも買ってきたような言い方で話す。     あぁ、明日は良い撮影が出来そうだ。 こういう時の直感は外れたことが無いのが密かな自慢だ。       最高のクリエイティブチームと向かうのは、無人島の廃墟跡。     [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.33 / ancient madder print ②

エンシェント マダーの使い手ROBERT KEYTE社の担当者が英国よりやってきた。 都内の某ホテルで打合せをする。     部屋に案内され中に入ると、ベッドの上に生地サンプルが山のように積み上げられている。 実は、この光景は見慣れている。日本支社を持たない生地メーカーは、こうやってホテルの一室で商談をすることが良くあるのだ。高級ホテルのスイートルームでやることもあり、普段見れない世界を垣間見ることが出来る。     簡単な挨拶を済ませて、早速本題に入った。     『anciet madder(エンシェントマダー)とは?』     色々と話を聞いているうちに、ぼんやりとしていたマダープリントの全容が明らかになってきた。     「ancient=古代の」とある通り、イギリス古来のプリント方法の一つ。 また、「madder=茜(あかね)」の事で、茜をはじめとした天然の原料を使って染色する草木染めの一種である。     天然の染料を用いて染めるので、天然ならではのナチュラルな色合いがある一方で、鮮やかで発色の良いカラーが出にくい。(現代の多くのメーカーは、天然染料ではない薬剤を使って発色の綺麗さを追求している。昔のイギリス タイメーカーやイギリス生地メーカーが少し沈んだ深い色合が多かったのはこれによるところが大きいと推察される。)     また、染料だけではなく生地にプリントする方法も昔ながらのハンドスクリーンで刷っている。 今、世の中に出回っているタイ用プリント生地の殆どがインクジェットプリンターによるものだ。機械によるプリントは、ムラや失敗も少なく安定した品質となっている。(あまり本件と関係ない蘊蓄だが…、インクジェット機のヘッドはエプソン製が大きなシェアを占めている) しかし、インクジェットは、生地表面にインクを吹き付けるので生地の表層部分にしか色が浸透しない。ハンドスクリーンによるプリントは手で刷って染料を浸透させるので、より生地の深くまで浸透しやすい。マダープリントならではの「深い色合い」は、この辺りにも理由があるように思う。     また、『抜染プリント』という手法も同時に用いられる。 これは、ある指定した部分だけ(柄の部分)染まらないように糊をつけて下染め(無地染め)する。その後、糊を落とした柄部分(染まっていない白部分)に先程のハンドプリントを施すのだ。   ※通常のプリントは白い生地の表側だけ色柄をプリントするので裏側が白くなっている。 一方マダープリントは、抜染で生地全体を染める工程があるので裏側も色がついているのが特徴の一つ。(近年、これを真似て裏側だけインクジェットで色をつけて、柄をプリントする表側は白生地に仕上げた“マダー風”も存在する)             上記のように、時代錯誤とも言えるような手間のかかる作業を経て出来るのがマダープリントだ。皆やらなくなった理由が窺い知れる。     効率を考えると、最新のインクジェットプリンターに取って変わられたのも仕方ないのかもしれない。 しかし、だ。効率や安定だけが素晴らしい商品だとは限らない。非効率であっても、コストがかかっても、何者にも代えがたい魅力ある商品が世の中には存在する。     これまでも、効率や時代の流れによって無くなってしまった伝説の逸品があった。   エルメスのダッフルコート生地を作っていたことで有名なMOORBROOKの3重織りパイルヘリンボーン生地。カールフロイデンベルグのボックスカーフ。古いブルックスブラザーズのボタンダウンシャツ用の生地を作っていたダンリバーオックス。80年代以前のアイリッシュリネン。ヴィンテージのトニック。リーバイスのコーンミルズ社デニム…等々、現在ではもう手に入らない。     マダープリントは、これらに並ぶ伝説の銘品となるように思う。(勿論、途絶えることなく続いて欲しいと切望しているが…) [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.32 / ancient madder print ①

『マダープリントとは?エンシェントマダーとは?』     昨今、英国ヴィンテージ調のプリントタイが人気だ。ファッション誌でも多く紹介されていて大きなトレンドとなっている。その中で、『マダー風の…』『マダー調のプリントが…』といった注釈や説明をよく見かける。 しかし、『マダーとは?』を正確に答えることが出来る人は案外少ない。     実は、数年前からこの『マダー風プリントタイ』と呼ばれるものを何度か目にしていた。PITTI(年2回フィレンツェで開催されるファッションの大型展示会)に出展しているネクタイメーカーが多く使っていたのだ。   そこで、 『これはマダープリントのタイなのか?』 と聞くと   『いや、正確にはマダーじゃあない。マダープリントはもう出来ない。あの雰囲気を再現したものだ。』     という回答が殆どであった。 ※殆ど…と言うのは、『マダープリント』を聞いても何の事か分からない人もいるのだ。     海外のとある人気ショップのバイヤーに聞いても 『マダープリントはもう出来ないって聞いたよ。今あるのは「マダー風」じゃあないかな?』 という回答だった。   『じゃあ、本当のマダープリントってどんな物なのか?』   、、、 今は出来なくなった?もしくは殆ど流通していない謎のタイ…という噂だけが一人歩きしていて正確な情報をもっている人に中々出会わない。 ネクタイメーカーに聞いても、昔ながらの手法でやっていたプリント方法で今は出来ないらしい…といったぼんやりとした答えだった。   色々手を尽くして調べていたが、噂話程度のものや先述のようなぼんやりとした情報にしか辿りつかなかった。そんな諦めかけていたときにふとした偶然で出会ったのが、英国の生地メーカーであるROBERT KEYTE社。おそらく現存するメーカーでは、世界で唯一エンシェントマダープリントをすることが出来る稀有な存在だ。       ある日、数年前に取引先の担当だった人が別の会社に移ったので挨拶にきていた。色々と商材を紹介してもらったが…、正直に言うといきなり取り扱うような商材は無かった。 だがふと、先輩に「出会いや縁というものを日頃から大事にしなさい。」とよく言われていたのを思い出したので『次回出張に行く際にはオフィスに寄らせてもらいますよ。』と言ってその日は別れた。   それから数週間後。出張先で商談をしていると次の打合せ先からアポイントを変更して欲しいと連絡が入った。すっぽりと時間が空いてしまったので、どうしようか思案していた際に先述の営業担当者の顔が浮かんだ。まぁ顔を見るだけでも、といった軽い気持ちでオフィスに向かったのだが…、この時の何気ない気持ちとちょっとした偶然が重なって新しい商品開発に繋がっていくとは夢にも思わなかった。 本当に『出会いや縁』は大事だ。   オフィスに着いて、また幾つか商材を見せてもらったが、前回同様に今すぐにどうこうするといった事はなく、少し世間話をして何となく帰ろうかと思っていると、 『僕はあんまり詳しく知らないんですが、別の部署で生地を扱っているので時間があったら少しみてもらえませんか?』と言われた。   生地は大好物である。時計に目をやると、次のアポイントまでまだ少し時間があった。 ジャンル違いの生地だと思っていても、時代が変わると使うようになった経験を何度か繰り返していたので余裕があれば選り好みせずみるようにしている。     奥から別の担当者が来て生地見本を机の上に並べていくのを眺めていると、 ある文字を見つけて驚愕した。       『Madder 』 [...]

COLUMN 『服の向こう側』 vol.31 / RING JACKET Napoli-safari jacket ①

コロニアルスタイルの代表的なアイテムと言えばサファリジャケットを挙げる人も多いと思う。 ベルト付きのジャケットはここ数シーズン人気のディテールだ。     カジュアルなサファリジャケットをこれまでも何度か作ってきた。これまでの物もとても良い雰囲気だったが、『最高のサファリジャケット』を考えたときにこれまでとは違ったアプローチを思いついたのだ。   『ナポリ仕立てでサファリジャケットを作ってみてはどうだろうか?』 という思いが湧いてきた。   『ナポリならではのハンドを駆使したサファリジャケット。ナポリ テーラーリングを駆使するが、テーラード ラペルド ジャケットではないカジュアルサファリジャケットを!』     コンセプトは決まった。 後はナポリに行くだけだ。     ヴェスビオ山         ナポリと言えど、飛び込みで工房に訪ねていっていきなり無理難題を言ってやってくれるところはまず無い。 イタリアでのモノ作りは(特にナポリでは)、人と人の繋がりやコネクションが大きくものを言う世界である。     実は、少し前から幾つかの工房をあたっていた。 シャツ、タイ、パンツ…とナポリ企画で作っていたので、カジュアルジャケットもいつかナポリで…と思っていた。     とは言え先述の通り、いきなり訪問しても中々うまくいかないので知り合いから徐々に広げていく。     例えばシャツの打合せ中に 『知り合いで良いジャケット屋いないかな?』   『なんだ、ジャケットも探しているのか?ジャケットは知らないけどパンツなら良いヤツ知ってるぜ。』     と紹介してもらって見に行く。     パンツ屋でも 『知り合いで良いジャケット屋いないかな?』と聞くと   『ジャケット屋か…。良いところ知ってるぜ。けど、あそこはクオリティは抜群だけど納期はガタガタだ。ネクタイ屋なら知ってるぜ。』     、、、といった具合にすぐに辿り着くことは稀である。 そして出会ったとしても紹介してもらった先が必ずしも良いクオリティとは限らない。 気長に少しずつ輪を広げていく。       そんな作業を繰り返しているときに とある工房に出会った。 [...]