206 モヘアウエポン

こんにちは、HP担当の奥野です。

前回から引き続き新ブランド「206」のご紹介です。裏付のチノパンになります。裾の方やポケットの袋だけ別生地のものは多いですが、今回のは裏側全部ついてます。

ディテールは1950’sミリタリーチノのディテールを取り入れてます。裏付とはいえ、ただヴィンテージのチノ風というだけだとカジュアルメーカーでも多く作っています。

でも、そこはリングヂャケット!!!カジュアルメーカーの復刻チノパンとは違います。クロージングメーカーが作るとこうなる!といった美シルエットがウリです。

シルエットは弊社で定番でやっているノープリーツドレスパンツの型紙と融合。縫製もカジュアル工場ではなくドレスパンツ工場で縫っています。ドレスウールパンツ同様、腰回りに沿うよう立体的にパターンメイキングしています。

一般的なカジュアルパンツは平置きしたとき“ペタッと綺麗にたいら”になります。ドレスパンツはヒップ&腰回りに沿うよう立体的に作っているので平置きすると“シワが入るor膨らむ”ようになります。コレが結構穿き心地に影響するんです。

この丸みのあるシルエットが良い感じです!!!

後がせり上がってカーブしています。

ディテールはミリタリーチノ、パターン&縫製はドレスパンツといった感じです。

ドレスパンツの型紙で綿素材のチノパン、ヴィンテージチノのディテールでカジュアルパンツのシルエット、大別するとこの2つがほとんどでした。イタリア物でミリタリーデザインを取り入れているパンツ専業メーカーのものもありましたが、加工がやややりすぎてるものが多かったのです。意外とシンプルなアメリカン・ミリタリーチノーズを本格的な仕立てで現代的シルエットのものが無かったんです。

いつもブログをご覧の方は、ここまでだと裏付きになっているものの以前あったドレスチノに似てるな?といった感じだと思います。

実は素材が凝っているんです。

まず裏地のチェックはリング・デッドストック生地。50年以上もメーカーをやっていると様々な面白生地が倉庫に残っています。中にはどうしようもない?!or昔は良かったけど現代では使えない?!ものも多くありますが(笑)、探すと味わい深い生地も眠ってます。“ヴィンテージを復刻&超える”をコンセプトにしている「206」にはうってつけの生地が眠っていました。コットンネルのチェックで良い雰囲気です。

そして表地です。

当初からありそうでない格好良いチノパンを作りたくて、チノクロスの生地を色々探していました。意外とこのあたりの生地って一般に流通しているものがほとんどなんです。ドレス系の生地屋で探すとキレイすぎる…、デニムなど岡山に強いカジュアル系生地屋で探すとデニム&ヴィンテージ・リプロダクトメーカーでよく使っている生地や量販店で使われている生地はあるのですが、特別に凝ったチノクロスは見つかりませんでした。

そこでオリジナルで作ることにしました。当初チノクロスのもっとウェイトのしっかりとした生地である「ウエポン」を作ろうかと思いましたが…

※ウエポン

WEAPON(武器)ではありません。ウエストポイントからとった略語でウエストポイント士官学校のユニフォーム地に由来しています。正規は「経糸が36番手双糸、緯糸が24番手双糸の綾織物で腰があり光沢を持つ最高クラスのチノパン素材」とされていましたが、一般にウエポンという名称で売られているものも30~40番手双糸がほとんどで、中には単糸使いの生地にまでウエポンとして使っているところもあります。本規格のサープラスレプリカでもごく一部しか使われておらず、現在はウェイトのしっかりとしたチノクロス=ウエポンといった感じになっています。

じゃあこの本規格を復刻させよう!と思ったのですが、、、

それじゃあ、デニム&ヴィンテージリプロダクトメーカーと変わらないんじゃ?そういったメーカーは今沢山あるし、リングがそれをやる意味があるのかな?どうせやるなら、そんな既存のメーカーが思いつかないような面白い生地を作るほうが良い!

となり生地屋さんとまた、あ~でもない、こ~でもないと企画を練りました。

その中で一風変わった糸がでてきました。コットン×モヘアの混紡糸です。

一般の人には「コットン・モヘア。ふ~ん」といったあまり大きなリアクションは無いと思いますが、生地に詳しい人なら「なんじゃ、そら???」となります(笑)

実は、コットン×モヘアの糸って基本的に存在しないんです。コットンとウールは今まで出会うことはありました。どちらかというと、カジュアルの分野でコットン×ウールの生地は秋冬に良く見かけます。またウールとモヘアも出会うことがありました。どちらかと言うとドレスクロージングの分野で見かけスーツ地などによく使われます。

しかし、コットンとモヘアって今まで出会うことがなかったんです。コットン×モヘアの糸は、カジュアルでもドレスでも使うことがまずない?であろうとされていたのです。(というか誰も思いつかなかった…という方が正しいかも)

そのコットン×モヘアの混紡糸を糸屋からかき集め作りました。(昔紡績メーカーがサンプル糸として作ったものが少量だけ残っていたようです。)

綿100%だとある種の「堅さ」が強調されすぎるところがありますが、モヘアを入れることにより綿にはない「ハリ」がでており独特の風合いとなっています。綿生地でよく「打込みのしっかりとした堅い生地が最高」といった風に言われることがありますが、堅いだけの綿生地を作るのはある意味簡単なんです。。。打ち込み本数を増やして仕上げも硬くして…、誤解を恐れずに言うと、正直誰でも作れます。エアージェットなどの高速織機でパンパンに詰めて、ドンドン作れちゃいます。

ヴィンテージの生地って風合いがありながらしっかりしていると良く言われます。「しっかり=堅い」と勘違いされている場合が多いのですが、いわゆるヴィンテージ生地が織られた時代は高速織機ではなくシャトル式織機のように速度が遅い織機でゆっくり空気を含みながら織られていました。膨らみ感があり風合いも良いけどしっかりしているのがリアルなヴィンテージ生地です。ただ堅いだけの生地はどちらかと言うと大量生産の時代の生地です。

※似たテイストだと、カットソー生地でふんわり編み上げる旧織機の「吊編み機」が最近有名ですね。

もうちょっとウンチクを加えると、、、

何故、旧織機のような速度の遅い織機で織ると良いのか?いわゆる「糸」は一本の繊維で形成されているのではなく、何本もの繊維を撚り合わせて「糸」になります。生地を作るのは、経糸(タテ糸)を織機にかけて、緯糸(ヨコ糸)を打ちこんでいきます。その際、糸が端から端まで引っ張られます。端まで糸が送られた直後、糸が少し引っ張られた状態(緊張して堅くなった状態)になるのです。その後、少し戻ってリラックスした状態(ふんわり柔らかい糸本来の風合いが出る状態)になります。輪ゴムをネジったものをヨコに引っ張ったのを想像してもらうと分かり易いと思います。伸びきると堅くなり、戻ると柔らかくなりますね。

この緯糸を送りこむ速度が重要で、旧織機だと糸がリラックスした状態になってから次の緯糸を打ちこみます。そうすると糸本来の風合いが最大限に活かされるのです。高速織機だと糸が堅くなった状態のままどんどん打ちこんでいくので結果堅く糸本来の性質を活かしきれていない生地に仕上がります。

他にもトルク(動力)の問題等いろいろありますが、上記の部分は非常に大きいです。

ヴィンテージのウール生地、ヴィンテージのスウェットetcなどが現代の生地と違いアジがある…というには理由があったのです。

でもちょっと勘違いされやすいのですが、古いのが何でも良いという訳ではありません。技術革新や新しい素材など進化しているものもあります。今では少なくなってしまったけど昔の技術や製法が良いのと両方です。その良い・悪いを見定めなければいけませんね。何でもヴィンテージが良いわけでは無いし、その逆で現代の製法が正しいとも限りません。

モノ作りは奥が深いですね。過去と現代、異なるジャンルをクロスオーバーさせながら作っていくのが「206」の最大の特徴の一つです。

(ちょっとわかり難いかな?洗いかけてみました。かな~り良い感じです。)

ちょっと脱線しましたが、、、

そんな訳で、速度を限界まで落としゆっくりと織り上げたコットン90%、モヘア10%のモヘア・ウエポン生地を作りました。

最近のコットンは、シルケット加工等の後加工をして光沢を出しているものが多く、素材本来の光沢ではありません。今回の生地は、綿本来の風合いとモヘアの鈍い光沢が合わさり渋い表面感が特徴です。表面のザラリとした触感は、今まで見た事のない生地感です。(今まで誰も作ったことが無いので当然といえば当然ですが…。)手持ち感とハリ感を出すため紡績したコットン×モヘアの糸に追撚をかけています。この効果も相まって本当に素晴らしい生地に仕上がっています。

実はこの糸、少量だったので全部使っちゃいました(笑)。もうありません。

次に作ろうとすると1色100反ほど作らなければならないので、事実上最初で最後の生地です。そんなに安い生地じゃないので、低価格の量販店では使えないし、かといってある程度の価格のブランドでコレだけの反数をこなせるところは、、、ラルフローレンあたりが本気になったら分かりませんが(笑)。まあ、ないでしょう。

そんな希少価値もある生地を使って、リングならではのパターンと縫製で作られたチノパン!是非店頭で手にとってご覧ください。

(ヴィンテージ顔負けor超えた?!生地なのにスッキリとしたシルエット)

(横から見ても良い感じ。ヴィンテージ~にありがちなバタ臭さがありません。でも渋い表情が◎)

ネームも雰囲気抜群。

ボタンも実は高級な本水牛釦と凝っています。フラップ裏もチェック生地。ヒップのシルエットも◎です。

最後にモデルのセールスdiv.マネージャーの笹本です。こんな感じのテイストで履いても、テーラードジャケットの組下パンツとしてもOKです。裾はロールアップしても、しなくてもOKです。

「206」モヘアウエポン 裏付きチノパン ¥32,550-(税込)

Ice Balloon