『206』Pコート

こんにちは、HP担当の奥野です。

少し前に紹介させて頂いた『206』コートが入荷しました。

『206』ブランドコンセプトはコチラ(ちょっぴり長文なので初めての方は覚悟して読んでください(笑))

『206』Pコート

(ヴィンテージのサンプル)

1910年代のPコートをとあるルートから手に入れました。およそ100年前のPコートは現代の常識から外れた非常に驚きのコートだったのです…。

以前も少し書かせていただきましたが、本来ドレスクロージングとワークウェアやミリタリーウェアは非常に近い関係にあったのです。70年代以降の大量生産時代に入り服作りが効率化され全く別モノとなってしまいましたが、ヴィンテージと呼ばれるそれ以前の服には今見てもハッとするパターンや縫製がされていることが良くあります。

このヴィンテージのコートには、そんなディテールが所々に散りばめられていたのです!!!当時はいわゆる現代のようなシステム化された量産工場がまだなく、手仕事によるウェイトが多く占められた服作りをしていました。

立体的なパターン、風の侵入を防ぐ大振りの衿、それを身頃に沿わせる型紙、首元をくる独特の形状、襟のノボリ、袖振り…完全にテーラードの作りだったのです。

今多くのカジュアルメーカー・ヴィンテージ復刻メーカーがPコートをリリースしています。しかし、カジュアル用のブルゾン・コート工場で縫いあげられたそれらは、本当の意味での復刻ではないのです。誤解を恐れずに言えば、“見た目のデザイン”だけを復刻することはある程度の技術と生産背景があればできます。しかし、もっと服の根本的な部分まで当時の服を再現できるのは、クロージングの仕立てを理解している所でないと不可能なのです。

ワークウェアやミリタリーウェアだからステッチや縫製が汚くても『アジ』だと言う人もいますが、実は間違いなのです。確かに最近の物(と言っても数十年前になりますが…)は汚いものが多いです。しかし、ヴィンテージの物はすごく丁寧に作られているものが多いです。

ネイビーの生地にブラウンのWステッチが綺麗に並んでいます。分厚い生地を丁寧に仕上げるのは案外出来ていないところが多いですね。このPコートのショートタイプは国内メーカーでもリリースされていますが、ロングタイプは少ないです。ショート型はパリの名店アナトミカでも復刻してましたね。でもワーク工場で作られているからか、ちょっぴり縫製が…。

衿のノボリも◎。首から肩、そして背中にかけてなだらかな曲線を描き吸いつくようなシルエットです。

衿を立てて着てもスーーっと沿います。

Pコート通?!の方が良く見ると衿がかな~り大きいのに気がつくと思います。荒れた海の甲板での着用を想定し風雨の侵入を防ぐためのディテールです。時代が経つと簡略化され衿も小さくなっていきます。

小さい衿を付けるのは比較的簡単なのですが、ここまで大振りの衿になるときれいにカーブさせ曲げながら(身頃に沿うように)つけるのは難しいのです。ただ平面にくっつけるだけなら簡単ですが、衿のノボリと身頃に沿うようにし立体的な形状にするには中々大変です。

その為に、、、

衿を中心で割り分割してカーブさせるようにしています。ココまではちょっぴり古いアウターでもあります。

このPコートはさらに、、、

肩線の延長上にも切り返しを入れ、衿を4等分にしています。これにより大きい衿をカーブさせるのです。

ちなみに…、襟裏のジグザグのステッチですが、よく『衿を綺麗に立たせる為のディテール』と言われていますが、長年縫製に携わる熟練の職人、スーツだけでなくクラシックなコートも丸縫いできる仕立て職人ともに『関係ないよ。見た目だけ。皆難しくそれっぽく言ってるけど、特に効果はないで。』と笑いながら答えてくれました(笑)。こんなデマ?!ではないですが、間違ったウンチクが広まっていることも結構ありますね。

改めて見るとやっぱり大きい衿です。

ヴィンテージでは釦が、13個星の刻印がはいったイカリ釦ですが、206では本水牛釦で上品に仕上げています。水牛釦は、通常のコート用の25mmは結構あるんですが、29mmの大型は意外と無いんです…、値段も結構それなりに…。Pコートは、ボタンたくさんあるので結構コストアップなんですが…、かなり頑張ってます!そんなことはさておき、単純に水牛釦ってカッコイイですよね!!!生地とのマッチングも◎です。

実は裏地も凝ってます。ヴィンテージではウールっぽい素材を用いていたので、ウール55%.キュプラ45%の裏地を別注で作っちゃいました。このウールの質感がありながら、キュプラの吸湿・浸透性のある生地はある意味スゴイです!!!まぁ本来ウールは吸湿・保温性の高い天然素材なので、織り方によっては裏地として適しているかもしれませんね。ヌタッとした質感が何とも言えない渋い表情です。

以前少し書きましたが、日本の裏地は凄いんです。世界のトップメーカーは殆ど日本の裏地を使ってます。『裏』ということで、ほとんどクローズアップされませんが、実は、『日本の匠』の一つなのです。

裏地アップ。画像では伝わり難いな~~。実物はもっと良い雰囲気です。触ると「何だコレ???」となります。こんな裏地見た事ありません(笑)。

さて、まだまだウンチクはあります。そろそろ読むのを諦めている人もいるかと思いますが、まだ続きます(笑)。

ヴィンテージのPコートを調べると、、、

毛芯仕立てになっていたのです!!!

時代的にも、現在ブルゾンやコートに多用される「接着芯」はまだ存在していなかったから?と推測されますが。。。

そこで、206でも毛芯仕立てPコートを作ろう!となりました。

先程からパターンやディテールの作り込み方がドレスクロージング寄りだと書いてきましたが、これは決定的です。カジュアルメーカー&ヴィンテージ復刻メーカーにはできません。断言できます(笑)。当然といえば当然ですが、畑が違います。ウチは、毛芯仕立てを50年以上やってるメーカーです。

接着芯を使うと保型性が増しますが、生地を動かないように固めるので、生地の風合いも硬いものになりますし、衿やフロントのロールが自然な柔らかいものではなく『ガッチガチ』になります。また最初は良くても、数年使うと型崩れがおきたり、接着がはがれて表地がボコボコになったり…といった症状が出やすいのです。

ウェイトしっかりのへヴィ生地ながら、ふんわり柔らかなロールと生地の風合い。接着芯でバリバリに固めた作りではこうはいきません。素晴らしい出来栄え!!!

では、次に生地のコダワリを少々。コンセプトに縫製&生地は日本製にこだわる!とある通りスペシャル別注生地です。

元々Pコートに使える最高の生地(メルトン)を開発しよう!というのが企画コンセプトでした。

一般的なメルトンは、グレーは霜降りはあるもののネイビーはベタ無地しか無かった。また通常のメルトンは、糸値の安い粗野なものを使った紡毛を平織りにしたものを縮絨をガチガチに強くかけて作られます。これも以前書きましたが、『固い生地=ヴィンテージ風の良い生地』といった間違った解釈?!がまかり通っているので、ここに安価なナイロンを10~20%いれて固く仕上げます。機元もクロージングのコート等を織るところとは違うカジュアル専門工場で織られます。高速織機でバンバン大量に作っていきます。人の手の温もりを感じるスローな服地とは全く反対の世界です。

今回の生地はそれらの常識を覆す素材です。

①トップ糸を入れる事により白糸のチラつきが出るようにした。

②平織りではなく大きな綾目がでるようにした。

③紡毛ではなく梳毛(細く長繊維な繊細なウール)を用いた。紡毛ではウォーム感(膨らみ感)がでるが、よりハリとしっかりとした手持ち感が欲しかったので、梳毛をミックスさせてメルトン加工を施すことにより、目付しっかり重みのある生地ながらハリ感がありしなやかさも共存する変わった?生地に仕上げた。

④表面仕上げも、通常縮絨をかけたあとムラがあるので表面をカットし綺麗にするが、あえてその工程を省き綾目の潰れ方が不均一なヴィンテージ調の仕上げにワザと仕上げている。

(生地アップ。屋外の撮影&デジカメの為少し白っぽく映ってますが、濃紺です。)

上記のような事ができるのも、通常カジュアルメーカーが良く使うメルトンを織る工場ではなく、クロージング素材を織る工場だからこそできた素材です。

また織機の速度を最低速度まで落としゆっくり、ゆ~っくりと織られた生地はウェイトしっかりながら、触感は非常にソフトなのが最大の特徴です。重く堅いだけの生地は簡単に作れますし、巷に溢れています。

リングヂャケットプロデュース『206』ならではのアウター素材が出来上がりました。

ウール100%

そんなウンチク盛り沢山ですが、シルエットはスッキリ現代的です。デニムにもOK!もちろん206チノパンとの相性も抜群!!!

ウールパンツにも合わせても良い感じです!コダワリ満載ですが、アイテム自体はシンプルなので着まわし抜群の便利アイテムでもあります。

生地がスペシャル!裏地もスぺシャル!!縫製もスペシャル!!!ディテールもスペシャル!!!!スペシャルだらけの逸品です(笑)。本当の復刻を作るだけでもかなり注目だと思いますが、そこに現代の感性やセンスを入れたオリジナル生地を融合させることによって、ただヴィンテージを復刻するのではなく、次なるヴィンテージになり得る商品になったと自負しております。

ただ、一つだけデメリットが、、、

コダワリ満載すぎて生産数が少ないです。多くのお客様にみて頂きたいのですが、、、

という訳で気になる方はお早目にっ!!!是非店頭にてお確かめ下さい。

206 Pコート ¥78,750-(税込)

Ice Balloon